目で見て見分けるやり方の次に、押して見分けるやり方があります。
「瘀血(おけつ)」というのは、わかりやすく言えばよどんだ血液のことです。
頭皮の毛細血管の先端部に、血液がヘドロのように沈澱した状態といえます。
この瘀血(おけつ)が、頭のてっぺんに発生し、ゆっくり時間をかけて、次第にてっぺんから薄くなっていくのが「瘀血(おけつ)型ハゲ」なのです。
満員電車の中などで、ギュウギュウ押し込まれながら、見たくもないのに目の前に他人の頭がくる、ということがよくあるかと思います。
そのときに、頭のてっぺんが薄くなりかけている人を見かけたことがありませんか。
まさにそれが、ここで言っている「瘀血(おけつ)型のハゲ」なのです。
この「瘀血(おけつ)」になっているかどうかを調べるには、頭皮の色で見て確かめる、という方法以外にもやり方があります。
それは頭の前頭部からてっぺんにかけてを押してみればいいのです。
まず、押して頭皮がまるでコンニャクのようにブヨブヨしていたらたいへんです。
ひどい人だと、押しつけた指がグーッと入ってしまうような感じがします。
こういう方は「瘀血(おけつ)型ハゲ」の深刻な状態です。
一刻も早く、ハゲ防止の手を打たなければなりません。
もう一つ、押しの一手があります。
それは頭頂の一点を押すやり方です。
正確には、まず両耳から頭のてっぺんへ向かって垂直に線を引きます。
次に眉間の中心と後頭部の中心を結んで線を引き、その二本の線が交差するポイント、ここは、人体のツボ(経絡)の世界では「百会(ひゃくえ)のツボ」と言うようです。
この部分を、片手の中指の腹で強く押してみてください。
どうでしょうか?
①ちょっと押しただけなのに痛い
②押されると気持ちがいい
③頭皮がカチカチで何も感じない
あなたの頭皮の状態は、この三つのうちのどれに近いですか?
あなたが①だったら喜んでください。
ちょっと押しただけでも痛みを感じるようなら、まだ頭皮に神経が働いている証拠。
瘀血(おけつ)の心配はありません。
では②の場合はどうでしょう。
押しても痛みがなく、かえって気持ちがいいくらいでしたら、これは危険信号です。
あなたの頭皮では、すでに瘀血(おけつ)が始まっているとみてよいでしょう。
痛く感じるほうが正常なのです。
若くて髪の毛のたっぷりしている人は、頭のてっぺんをマッサージすると「痛い!」と言ってからだをよじらせる方がいます。
ところが髪の毛が薄くなりかけた年配の方などは、この頭皮マッサージに、目をつむってとても気持ちよさそうにしていらっしゃいます。
このように、頭を押してみるこのやり方は、ご自分の頭皮が瘀血(おけつ)状態になっているかどうかを知る上でとてもわかりやすい方法だと思います。
痛くない抜け毛は危険サイン
もうひとつ、こんなチェック法もあります。
髪の毛にブラシをかけたり、くしでとかしたりするときにも、瘀血になっているかどうかを見分けることができるのです。
あなたがいつも使っているブラシや、くしには抜け毛が何本かついていることと思います。
このブラシやくしにからまった抜け毛の数を、たいへん気にしてらっしゃる方が多くいます。
「あッ、こんなに抜けた!」と毎日毎日、ブラッシングのあとに、抜け毛の量を見ては一喜一憂しているのです。
しかし、問題は、そこではないのです。
問題は、その毛が抜けたときのあなたの自覚症状です。
つまり、ブラッシングで毛が抜けるとき、痛かったのか、痛くなかったのか、また、プチッと音がしたか、それともスッと抜けてしまったのかということです。
もし、プチッと音がして手ごたえを感じたにもかかわらず、痛みを感じないようだったら、その部分の頭皮に瘀血(おけつ)が広がりつつある証拠です。
正常な頭皮から髪の毛を抜くときは、プチッと音がしてかなり強烈な痛みがあるのがふつうだからです。
大切な髪です。
このプラッシングのときに抜ける毛があったらチェックしてみてください。
四〇歳から五〇歳前後になってハゲてきた人は、ほとんどがこの瘀血(おけつ)が原因と言えるのです。
だからといって、あまり悲観することはありません。
頭皮を清潔に保ち、マッサージで血行をよくするよう心掛ければ、かなりの程度進行を抑制できることが確認されています。
やっかいなのは頭皮が石のように固いとき、
頭皮の色を調べてみて、「おっ、オレの頭皮は青白いゾ!だからハゲにはならんわい。まずはひと安心」……。
そうおっしゃるあなたには、「ちょいと待った!」と言いたいです。
実は、頭皮の色が青白くても、それだけでは喜べないのです。
先ほど、ご自分の頭皮を押してもらい、その感触を確かめてもらったと思います。|
柔らかく、ブヨブヨとしているようだったら、てっぺんタイプの「瘀血(おけつ)型」の明らかな兆候であると申し上げました。
この感触というものをバカにしてはいけません。
もうひとつの代表的なパターンの「ひたいタイプ」かどうかは、この感触で、はっきり見分ることができるのです。
もしあなたの頭皮が固いゴムのような感触でしたら、あなたの髪の毛は健康です。
触わってみて固いのは固いのだけれども、タイヤに使われているような硬質ゴムの感触でしたら大丈夫なのです。
でも、頭蓋骨の上に皮一枚張ってある……そんな感触のカチカチの固さだったらちょっと厄介です。
つまり、石の表面を押しているような固さです。
三択の③の状態がこれに当たります。
つまり、頭皮が青白かったとしても、石のように固いのであれば、それは「ひたいタイプ」、つまり「帽状腱膜(ぼうじょうけんまく)型ハゲ」の危険があるからです。
この「帽状腱膜型ハゲ」がなぜ厄介かといえば、それは遺伝的要素が強いからです。
「瘀血(おけつ)型ハゲ」の場合は血行不良が原因ですから手当てをすれば希望も見えてきますが、「帽状腱膜型ハゲ」の場合は、早いうちに処置をしないと、希望もかすんでしま
うのです。
頭にも、体の他の部分と同じように皮フがあります。
これを頭皮といいます。
しかし触ってみると、どうも他の皮フと感触が違います。
どうも、その下にもまた、膜が一枚あるような触り心地なのです。
そこで、人体図をひもといてみると、まさにその通りでした。
前頭部から頭頂部にかけて、ちょうど帽子を被っているように、薄い膜があるのです。
これを「帽状腱膜」というのです。
この薄い膜は、たいへんな強度で、その下にある筋肉(帽状腱)を保護しています。
健康な頭皮の場合、指で押すと、腱膜を通して筋肉が反応してきます。
つまり硬質ゴムのような弾力性を持っています。
ところが人によっては、この帽状腱膜が後天的に酸素欠乏状態を起こし、萎縮を起こしてコチコチになってしまうのです。
生理学の用語ではこれを、腱膜の異常発達と呼ぶそうですが、症状的にみればこれは『発達』というより機能的な退歩と言えるのでしょう。
こうして腱膜が岩のように固くなってしまうとどうなるか。大事な毛根が入っている皮下組織に血液が通わない重大事態というわけです。
当然、栄養不足、酸素不足となり、毛根細胞をイキイキさせるエネルギーを生み出すことができなくなります。
エネルギーがなくなれば、毛根は新しい髪の毛を生産することができなくなってしまうのです。
この状態が進行していくとやがて、おでこからピカピカとハゲ上がってしまいます。
まさにこれが「ひたいタイブ」である「帽状腱膜型ハゲ」の特徴です。
このタイプの場合は、遺伝的なものであり、三〇代に一気にハゲ上がるケースもめずらしくありません。
自分が帽状腱膜型タイプかどうかを、一刻も早く知り、若いうちからのマッサージをおすすめします。
頭皮を触らずに動かせるか
「ひたいタイプ」のハゲか、または、その兆候があるかは、触ってみたときの感触でわかると申し上げました。
それ以外にも、別の目安もあります。
自分で手を使わずに頭皮を動かすことができるかどうか、というものです。
鏡の前に行って、頭皮を動かしてみてください。
あなたの頭皮は動いていますか。
なかなか動きにくい人は、白目をむくようにしたり、眉毛を上げるようにしたり、または、耳を動かす要領でやってみてください。
鏡を見て動いているかどうかはっきり確認できないようでしたら、そっと頭皮に手を触れて、頭皮が動いているかどうかを確認してもよいでしょう。
もし、これで頭皮が動くようでしたら、あなたに「ひたいタイプ」のハゲの兆候は見られないと思ってよいでしょう。
なぜなら、帽状腱膜がひきつれて、張ってくると、その膜の下にある筋肉も退化していき、頭皮を動かすことができなくなると考えられるのです。