薄毛、抜け毛が増えている

いま日本で大勢の人が、それも多くの場合ひそかに、薄毛、抜け毛の悩みを抱えています。
薄毛というと中高年男性の悩みのように思われがちですが、20歳代、30歳代といった若い年代の人たちや、また女性でも、薄毛で悩む人が増えています。
一方、最近になって、そのような髪の毛の悩みに対する医療としての取り組みが、かなり進んできました。
薄毛、抜け毛が「脱毛症」と呼ばれ、本格的に医学的な治療の対象になってきたのです。
男性の薄毛の多くは、「男性型脱毛症」と呼ばれる進行性の脱毛症ですが、そのメカニズムの解明が進み、「フィナステリド」(商品名プロペシア)という「飲む頭髪治療薬」が実用化され、日本でも使えるようになりました。
薄毛や抜け毛は、ストレス過剰や片寄った生活、何らかの体の病気、薬物の影響や遺伝素質など、さまざまな原因から起こります。
これらの脱毛症状や、女性の薄毛に対しても、発毛を促す「ミノキシジル」という薬をはじめ、各種の治療法が工夫されています。
また、髪の毛の治療のなかでは、「心のケア」が重要な意味をもってくることがあります。
薄毛や抜け毛のことで深刻に悩み、人に会いたくない、外に出たくない、先々のことが不安でたまらない、などといった精神状態に陥ってしまう人もいます。
薄毛、抜け毛は、多くの場合、適切に対処すれば改善します。
どのような治療がその人に適しているかは、人によってそれぞれです。
医師に頼るだけでなく、自分でもできるだけ、正確で新しい医療知識を身につけていくことが大切です。

薄毛、抜け毛が医療の対象に
薄毛、抜け毛の治療薬が実用化
「髪の毛というのは、あるときは何とも思わないけれど、ないと絶対に困るものです。この悩みは、髪の毛が少なくなった人間にしかわからないでしょうね」
髪の毛がフサフサしている人が、それをとくにありがたいとか幸せだとか感じることはあまりないかもしれませんが、頭部が薄くなったり、あるときから抜け毛が急に増えた人にとって、その悩みは深刻です。
はかり知れないほどの精神的な苦痛を抱え込んでいる人も少なくありません。
ある調査によれば、いま日本には、薄毛、抜け毛で悩む人が1200万人以上いるとされています。
これまで日本の医療の世界では、そのような髪の毛の悩みについて、どちらかというと軽視される傾向がありました。
健康に重大な影響を及ぼすことではないといったことからなのでしょうか。
しかし髪の毛の成長やトラブルについての研究が進み、効き方やメカニズムを明確にした有効な治療薬、治療法が実用化されてきています。
薄毛、抜け毛が、「脱毛症」と呼ばれ、ようやく本格的に医療の対象になってきたのです。
若い人たちや女性にも髪の悩みが髪の毛の状態がよくなれば、不安や悩みが軽くなって気持ちもラクになり、それがまた心身の好転につながります。
人間の毛についての研究や診療は、まだ必ずしも十分なものとはいえません。
しかし、薄毛や脱毛は、多くの場合、適切な診断と治療をすれば改善します。

もう一つ、知っておいてほしいことがあります。
頭髪治療にあたっているクリニックにおける、最近の来院者の、性別、年代に関するデータです。
薄毛、脱毛というと、中高年の男性のことと思われがちですが、実は20歳代、30歳代といった若い年代層の人たちが7割以上に上り、女性の患者さんもかなりいます。
薄毛、脱毛は、年代、性別を問わず、たいへん幅広い人たちに起こることがあるトラブルなのです。

さまざまな人に薄毛の悩みが
20歳過ぎから薄毛が気になり始めて
薄毛、脱毛といっても、人によって、そのトラブルや悩みはさまざまです。
まず、若い男性です。
Aさん(30歳代、会社員)は、20歳を過ぎるころから前頭部が薄くなり始め、頭皮に発疹がよくできました。
その後も前頭部、頭頂部の薄毛が進んで地肌が透けて見えるようになり、強いストレスを感じていました。
「男性型脱毛症」と思われたために、頭髪治療の飲み薬、塗り薬の使用を中心として治療を開始し、3ヵ月で頭皮のトラブルが改善し始め、本人に発毛の実感がありました。
その後も順調に経過し、とても明るく元気になり、いまも治療を継続中です。

1年8ヵ月の治療に取り組んだ40歳代男性
次に、もう少し年代が上の男性です。
Bさん(40歳代、自営業)は、10年ほど前からシャンプー時の抜け毛が目立ち、年々髪の毛のボリューム感が減ってきました。
市販の育毛剤を数年使っていましたが、効果はよくわかりませんでした。
医師と相談のうえ、飲み薬、塗り薬などによる治療を開始して3~4ヵ月で、頭頂部に
うぶ毛が生えてきて、1年後には頭頂部の地肌が見えなくなり、「精神的にラクになった。行動的になった」と言います。
1年8ヵ月後に治療を終了。
Bさんはそれまで独身でしたが、治療を終える少し前に恋人ができ、結婚したいと考えているとのことです。
クリニックを訪れる患者さんでは、「年代別構成比」からも見てとれるように、20歳代の人が全体の約3分の1、30歳代の人が約3分の1といった割合になっています。
男性の場合、「年をとって髪が薄くなるのは、ある程度は仕方がない」と考える人もいるかもしれません。
むしろ、20歳代、30歳代で前頭部や頭頂部が薄くなってきた人のほうが、誰にも相談することができずに、深刻に悩んでしまうことが少なくないようです。

頭頂部が透けて外に出られないの50歳代女性
女性のケースも見ておきましょう。
Cさん(50歳代、主婦)は、クリニックに相談に来たとき、頭頂部の地肌がかなり見えている状態。
ゆううつな気分で、家から一歩も出たくない、何もしたくない、というほどふさぎ込んでいました。
カツラをもっているが、これでいいという気持ちにはなれませんでした。
治療開始後、半年ほどで改善を実感し、その後も順調に経過しました。
外に出かけられるようになり、友達ともよく会うし、カツラは使わなくなりました。
何をするにも自信がもてるようになり、食べ物もおいしくなったといいます。
現在も治療を継続しています。
女性の患者さんは、年代によって、大きく二つの山に分けることができます。
まず、Cさんのように、40歳代、50歳代、いわゆる更年期、あるいはその少し前にあたる年代の人たちです。
テレビや雑誌などで最近、「プレ更年期」などといった言葉がよく開かれるようになりましたが、そういった年代の女性も増えています。
女性の更年期とその前後では、体内のホルモンバランスに大きな変動が起こりますが、その影響も関係していると推測されます。
もう一つの山は、20歳代をはじめとする若い年代の女性で、薄毛に悩んでいる人も少なくありません。

20歳代で薄毛、人に見られるのがストレス
Dさん(20歳代、介護職)は、20歳くらいから、自分の髪の毛がなんだか薄いなと感じるようになり、クリニックを訪れたときには、地肌が透けているところもある状態でした。
老人ケアの仕事に就いていたので、毎日いろいろな人と接し、髪の毛が薄いのを見られるのがイヤで、相当にストレスを感じていましたが、治療によってしだいに改善しまし
た。
その後、事務職に転職しましたが、髪のことも気にならなくなり、生き生きと仕事をしています。
若い女性の薄毛、抜け毛については、その原因やメカニズムについて、まだよくわかっていない部分も少なくありません。
これまで多くの女性患者さんを診療してきた経験からいえば、ストレス過剰(仕事の悩み、人間関係など)や、仕事の忙しさなどによる生活の乱れ(とくに睡眠、食事)がかかわっているように思われるケースが、かなり多いように感じています。

髪の毛のトラブルと、どう闘うか
薄毛、抜け毛が起こるさまざまな理由
このように、若い人たちから、40歳代、50歳代、もっと上の年代まで、男性だけでなく女性でも、さまざまな人たちが、髪の毛の悩みを抱え込んでいます。
それでは、そうした薄毛、脱毛を、どのように治療していけばいいのでしょうか。
薄毛、脱毛の分類には、いろいろな考え方があります。
いわゆる脱毛症を大きく二つに分けて、「進行する脱毛」と「一時的な脱毛」ととらえてみたいと思います。
いま私たちができる治療の実際からいっても、みなさんが頭髪治療に対する理解を深めていくためにも、それがわかりやすい見方だろうと考えるからです。
人間の髪の毛は、いろいろな理由や成り行きで、抜けたり薄くなったりします。
シャンプーしたりブラッシングをしたりすれば、何本か何十本か毛が抜けます。
髪の毛を手でつかんでギュッと引っ張れば、やはり何本か毛が抜けます。
ストレスや過労からゴソッと毛が減ることもありますし、年をとればたいてい、髪が薄くなったり、細くなったり、ボリューム感が減ったりします。
これらはどれも、髪の毛にとって自然な現象です。
また、人によっては、ある年代から、前頭部から頭頂部にかけての毛髪が十分に成長しきらずに、細く短い毛のうちに抜けてしまったり、髪の毛の本数が減っていったりする場合があります。
これを「男性型脱毛症」と呼びみますが、ヘアサイクル(毛周期)や遺伝的な素因が関係していて、男性ホルモンの体内変動や、ホルモン受容体の感受性の変化が大きく影響していることがわかってきました。

「進行する脱毛」と「一時的な脱毛」
これらのうち、年をとれば髪が薄くなる、つまり加齢による薄毛、脱毛と、男性型脱毛症は、人間の体の中で起こっている変動に基づき、時間とともに「進行する脱毛」ということになります。
人間の髪の毛は、そのほかの理由でも、抜けたり薄くなったりします。
その代表的なものが、ストレス過剰、頭皮のトラブルや血流障害、生活の乱れや体調不良、何らかの病気の影響、薬物によるトラブル、などです。
これらはいずれも、いま挙げたような事柄が原因やきっかけになって起こる「一時的な脱毛」と考えられます。
実際、頭髪治療のなかでも、ストレスや生活状況を見直すことから、薄毛や脱毛が改善したケースも少なくありません。
また、頭部に1センチから数センチ程度の円形の脱毛が起きる「円形脱毛症」という病気があります。
最近は自己免疫疾患の一種ではないかと考えられています。
やはり適切な治療によって改善するケースが少なからず見られますし、ここでは「一時的な脱毛」のほうに含めて考えておくことにしましょう。
いままで説明してきた、進行する脱毛、一時的な脱毛、という区分けは、頭髪治療を進めるうえでの実際的なとらえ方だと考えてください。
髪の毛を現在よりもいい状態にして、精神的な苦痛からも抜け出すためには、どうすればいいのか。
薄毛、脱毛の悩みと、どのように闘っていけばいいのか。
そのときに、「闘う相手」である薄毛、脱毛にどんなタイプがあるのかということを、大づかみにとらえておけば、有利な闘い方の工夫や努力も、それだけ見つけやすくなるはずです。

 

「進行する脱毛」と「一時的な脱毛」

◯進行する脱毛
・加齢による薄毛、抜け毛
・男性型脱毛症

◯一時的な脱毛
・ストレス過剰による薄毛、抜け毛
・血流障害による薄毛、抜け毛(片寄った生活、過度のダイエットなど)
・病気が背景にある薄毛、抜け毛(甲状腺の異常、鉄欠乏性貧血など)
・薬物の影響による薄毛、抜け毛(抗ガン剤、インターフェロンなど)
・頭皮のトラブル(粃糠(ひこう)性脱皮膚炎、脂漏性皮膚炎など)
・円形脱毛症

 

脱毛を食い止め、発毛を促進する
加齢による脱毛、男性型脱毛症
いま起きている薄毛、脱毛が「進行する脱毛」であれば、まずその進行をなんとかして食い止めることはできないかと、考える必要があります。
たとえ完全に食い止められなくても、脱毛の進行をできるだけ遅らせる、という考え方も大切です。
進行する脱毛としてまず知っておかなければならないのが、男性型脱毛症です。
これに対して、その症状の進行を食い止める「プロペシア」(一般名フィナステリド)という飲み薬が、日本でも使えるようになりました。
この薬による治療を中心として、その人にとってできるだけ好ましい頭髪状況を目指すプランを工夫していけるようになったのです。
また、私たち人間は誰でも、年をとるにつれて心身の衰えが進んでいきます。
老化現象です。
体の部位にもよりますが、たとえば皮膚は20歳前後をピークとして、20歳代半ば以降は、初めのうちはゆっくりとではありますが、しだいに衰えていきます。
老化現象から完全に逃れることは、少なくとも現在の医療や科学の力ではできませんでが、老化による「イヤな衰え」をできるだけ抑える工夫や技術が、近年になってさまざま
な形で開発、実用化されつつあります。
いわゆる「アンチエイジング」の取り組みです。
頭髪治療の分野では、加齢による薄毛、脱毛、つまり年をとって髪が伸びなくなったり、細く薄くなったりするのは、ある程度は仕方がないとしても、それをできるだけ抑え
る努力をしながら、一方で、発毛を促進する何らかの工夫はできないかということを、その人の心身状況をよく見ながら考えていくことが大切になります。

ストレス、睡眠不足、食事の片寄り
一方、ストレス、睡眠不足、食生活の乱れなど、ある程度具体的な原因やきっかけが推測できる薄毛、脱毛の場合はどうでしょうか。
当然ながら、その原因やきっかけを取り除くことができないか、どうすればそれを排除したり軽減したりすることができるのかを、まず考えていきます。
しかし睡眠不足も食事の乱れも、多くの場合、そうなってしまうような仕事や暮らしの状況が何かあります。
本人も「こんな生活は体に毒だ。直さなければ」と思いながら、なかなか直せずに現状に至っているわけです。
そこでまず、睡眠や食事についてアドバイスしながら、各種のビタミン、ミネラルを含むサプリメント(栄養補助剤)などを使用して栄養状態の改善を図る。
実際の治療のなかでは、そういった対処をしていくこともよくあります。
ストレスについても、なかなか面倒なところがあります。
薄毛や脱毛が進んでいると気づくこと自体が、本人にとって大きなストレスになりがちです。
髪の毛のことが気になって仕事が手につかない。
周りの人の目が気になって仕方がない。そのうちに、仕事のミスが増えたり、成績が低下したりして、それらがまたストレスになる。
そんな悪循環に陥っている人も少なくありません。
さまざまなタイプの脱毛に対して、おもに「ミノキシジル」という薬を使用して、積極的に発毛を促進していくことができます。
毛が増えてきたと実感して気持ちが明るくなり、ストレスも減る。
治療への取り組みが積極的になり、仕事の成果があがり、食事もおいしくなる。
そのようにして、いろいろな要素が相互に影響しあってくることが、頭髪治療ではたいへんよく見られます。

「心のケア」にも大切な役割が
また頭髪治療では、「心のケア」の視点も大切です。
髪の毛の悩みは、本人にとっては深刻でありながら、周りの人にはなかなかわかってもらえないし、相談もしにくい、といったケースが多く見られます。
そんななかで、一人で悩みを抱え込んで、悩みが深まり、仕事や勉強、家事などが手につかなくなったり、人に会うのもイヤになり、このままどんどん髪の毛が薄くなっていく
のではないかという強い不安が心の底から離れなくなったり、「心の重荷」が生じてきます。
そういった不安や落ち込んだ気分は、それ自体がまた、その人の生活にマイナスの影響を及ぼします。
実際の治療のなかでは、「心のケア」が適切に進むと、本人の頭髪治療への取り組みが積極的になっていったり、髪の毛の状態が改善していくにつれて「心の状態」も上向いて
明るく前向きな気持ちが出てくるなど、相互的な治療経過があります。
頭髪治療と「心のケア」が、ちょうど車の両輪のようにそれぞれの役割を分けあっていると考えます。

薄毛、抜け毛への多面的なアプローチ
頭髪医療の実際
実際の薄毛、抜け毛の治療では、以下のようないくつかのアプローチを重ね合わせながら対処していくというのが有効です。

・男性型脱毛症の進行の抑制、遅延(おもにフィナステリドを使用)。
・発毛そのものの促進(おもにミノキシジルを使用)。
・サプリメント(各種ビタミン、ミネラル)等の使用。日々の栄養状態の改善。
・ストレス、睡眠、食事など、頭髪への悪影響が疑われる事柄についての対処。
・精神的な落ち込みや不安などに対する適切なフォロー。

ドライバーは「髪の毛に悩む人」自身
髪の毛の治療を車の運転にたとえれば、ドライバーの席に座っているのは、薄毛、脱毛に悩んでいる「本人」です。
ドライバーである「髪の毛に悩む人」が、頭髪のトラブルについて適切な知識を身につけ、理解を深めていけば、それだけ「いい運転」、つまり「より高い治療効果」を実現す
る可能性が高まります。
どこまで頑張って治療に取り組むか。
髪の毛がどのくらいの状態になったら納得できるのか。
それを決めるのも、「髪の毛に悩む人」自身です。

この記事を書いた人
狭山清美

毛髪診断士、管理栄養士、フードコーディネーター
1984年生まれ。さいたま市出身。2児の母。
大妻女子大学管理栄養士専攻コースを卒業後、管理栄養士資格を取得。
健康食といわれる和食の利点を活かしつつ毛髪効果のある「和料理」を提唱する。趣味はマンガ(ワンピース)。

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