薄毛、抜け毛にはさまざまな原因が
髪の毛に悩む患者さんたちの訴え
薄毛、脱毛は、さまざまな理由で起こります。
髪の毛の悩みを抱えてクリニックを訪れる患者さんは、次のような症状の、一つまたは複数を訴えてきます。
「抜け毛が多い」
「髪の毛が細くなった」
「最近、毛が伸びない」
「地肌が透けて見える」
「セットがしづらくなった」。
「頭皮がアブラっぽい」
「髪が少なくなるのが不安」
薄毛、抜け毛の状態も原因もさまざま
もっとも、すぐにこのように表現するわけではなく、初めは「髪が薄くなった気がする」といった漠然とした心配の言葉を口にする患者さんがほとんどです。
医師が、髪の毛や頭皮の状態、いまとくに気になっているのはどんなことなのかと聞き出していくなかで、先のような具体的な事柄が出てきます。
なかには、医師の目から見てとても薄毛という状態とはいえなかったり、「抜け毛が心配だ」と言いながら、ではどんなときに毛が抜けるのか、シャンプー時に抜け毛が多いのか、ふだんちょっと手で触っただけでも抜けるような状態なのかも自分でわかっていなかったり、という状況の人もいます。
客観的な髪の毛の状態よりも、髪が薄くなることへの不安心理が際立っているのです。
また、髪の毛で悩んでいる患者さんでは、精神的にかなりまいっているような状態の人も少なくありません。
そういったことから、頭髪治療においてはとくに、身体面、精神面をトータルに視野に収めながら、患者さんのケアにあたっていくことが大切になっています。
頭皮の健康状態を改善する
約40%の患者さんに軽度の脂漏性皮膚炎
薄毛、脱毛にどう対処していくかは、それぞれの患者さんの状態によりさまざまです。
まず、頭髪、頭皮の状態から、仕事や日常生活の状況も含めて、実状をよく観察して、の毛に悪い影響を与えている問題点がないかどうかを探っていくことになります。
クリニックを訪れる患者さんたちの頭皮の状態を観察してみると、半数以上の患者さんの頭皮は健康な状態にありますが、約40%の患者さんに軽度の脂漏性皮膚炎(毛
穴など皮脂の分泌の多い部位に赤っぽい湿疹ができる症状)が見られます。
こうしたトラブルに対しては、ケトコナゾール(塗り薬)やケトコナゾール入りシャンプーなどを使用することによって、多くの場合、頭皮の状況は改善します。
脂漏性皮膚炎を引き起こす原因について、マラセチア菌という皮膚の常在菌が関与していることがわかってきました。
ケトコナゾールは、このマラセチア菌に対して有効な作用をもつ抗菌剤です。
頭皮をゴシゴシ強くこすらないで
テレビや雑誌などの影響が大きいと思われますが、フケやアブラを「髪の毛への害悪」「ハゲの元凶」と目の敵にして、シャンプー、ブラッシング、頭皮マッサージなどで過剰に頭皮をこすってしまい、そのために、頭皮が荒れたり、皮膚に発赤などの炎症所見が見られる患者さんがいます。
たしかに頭部のフケやアプラを放置すれば、頭皮の環境が悪くなり、人によっては粃糠性(ひこうせい)皮膚炎、脂漏性皮膚炎と呼ばれる状態になることもあります。
「粃糠」(ひこう)は乾いたフケ、「脂漏」は毛穴周りのアブラのことです。
その結果、頭皮の血流が悪化し、髪の毛によくない影響が出ることも考えられます。
しかし、フケやアプラをとことん取り除こうと、あまりゴシゴシ強くこすりすぎると、頭皮を荒らしたり、炎症を起こしたり、頭皮にとってかえって好ましくない結果を引き起こしてしまいます。
フケやアプラが少々あるからといって、それですぐに薄毛や脱毛がどんどん進むということではありません。
大事なのは、頭皮を適度に清潔で健康な状態に保つことです。
実際の治療のなかでも、それぞれの患者さんに合った皮膚への刺激が少ないシャンプーの選択と、よりやさしい髪の洗い方を指導することで、多くの患者さんの頭皮状況が改善しています。
ミノキシジルによる発毛の促進
発毛を積極的に促進する取り組み
髪の毛の悩みでクリニックを訪れた人が、実は頭皮のトラブルや不快感を抱えていることがあります。
それらは多くの場合、塗り薬の使用やシャンプーの工夫などで改善します。
ただし、フケやかゆみによる不快感が軽減しても、それだけで患者さんの満足感が得られるわけではありません。
患者さんたちはもともと、髪の毛が薄くなったり少なくなったりしていることを心配しています。
頭皮のケアを進めるとともに、薬剤の使用などによる発毛の促進に、あわせて積極的に取り組むことが大切です。
頭皮の状況にはいまのところ、とくに問題が見られないという患者さんであっても同様です。
育毛の促進には、ミノキシジルという薬が期待されています。
まず、実際にミノキシジルの使用を中心にした治療を実施して、頭髪の状況を改善することができた患者Eさんの経過を見てみましょう。
ミノキシジルによる「発毛促進」治療
Eさん(50歳代、男性、会社員)は営業職でしたが、数年前に転職し、かなりのストレスを感じていました。
未婚でずっとひとり暮らし。
食生活はインスタント食品が多く、サプリメントでビタミンB群、C、E、カルシウムなどを補給していました。
喫煙量は1日40本、お酒はつきあい程度ということでした。
10年ほど前から髪が細くなってきたように感じ、6年ほど前から地肌が透けて見えるようになりました。
抜け毛はさほど多いとは感じないのですが、前頭部の薄さがとくに気になるとのことでした。
クリニックを訪れたときには、「やれることは何でもやってみたい」と意欲的な姿勢でした。
ミノキシジル(塗り薬、飲み薬)の使用による発毛促進を中心とした治療を開始し、あわせて、フィナステリド、サプリメント(ビタミン各種、ミネラル各種)を処方しました。
また、ニコチンパッチを使用して禁煙に取り組み始めました。
4ヵ月後、髪の毛の変化は感じないが、禁煙が成功して体調がよくなり、ごはんがおいしいと感じるようになったとのこと。
7ヵ月後、発毛の実感があり、髪の毛にハリ、コシが出てきたと感じました。
友人から「以前と違う」と言われるのがうれしく、性格面でも以前より行動的になりました。
11ヵ月後に飲み薬を2日に1回に減量。
そのしばらく後にダイエットに挑戦し始めましたが、ダイエットを進めるにつれて抜け毛が増え、髪のボリュームが落ちました。
生活面で大きなストレスがあるようでした。
その後また、飲み薬を3日に2回に増量しました。
髪の毛の状態は、初診時からは明らかに数段改善しています。
現在は経過を見ている状況です。
ミノキシジルとはどんな薬か
もともとは血圧を下げる薬だった
1970年代に、血圧を下げる薬として開発されました。
しかし血圧を下げる効果はさほど見られず、全身の体毛が増えるという副作用があったために、実際の治療ではじきにあまり使われなくなりました。
製薬メーカーはこの「多毛」という作用に着目して、発毛薬として開発、販売をし直して、現在に至っています。
当初は血圧を下げるために作られた薬で、末梢血管を広げる作用がありますので、使用すれば血流の改善が期待できます。
加えて近ごろでは、この薬に、「毛乳頭細胞の増殖を促進する」「毛母細胞の退行を抑制する」などの作用があることがわかっています。
このミノキシジルという薬は、日本で市販されている「リアップ」「リアップレディ」の主成分であり、アメリカで販売されている「ロゲイン」の主成分でもあります。
違うのは主成分の濃度で、「リアップ」「リアップレディ」は1%濃度、「ロゲイン」は5%濃度および2%濃度(女性向けの「ウィメンズロゲイン」)です。
このほかに外国では、2%濃度の商品を販売しているところもあります。
以上のような市販の育毛剤はいずれも塗り薬ですが、クリニックで治療薬として使用する場合は、塗り薬として用いる場合もありますし、飲み薬として使用するケース
もあります。
副作用は、血圧低下、むくみ、体毛増加
塗り薬の濃度が高いほうが効果があがっていいだろうと思われるかもしれませんが、濃度が上がるほど、頭皮の荒れ(接触性皮膚炎)が生じるおそれが高まりますので、その点に気をつけなければいけません。
ミノキシジルのそのほかの副作用としては、まずもともと血圧降下剤として作られた薬ですから、使用中に血圧がある程度下がる可能性があります。
また、高血圧の症状があり、現在何らかの血圧降下剤を使用している人では、血圧が下がりすぎてしまう可能性も考えられます。
実際には、ミノキシジルを塗り薬として使用してとくに血圧に影響が出ることはほとんどありませんが、高血圧、低血圧である人、心臓、腎臓などに障害がある人、体のむくみがある人は、慎重に使用する必要があります。
ごくまれに、朝起きたときに上まぶたにむくみを感じることがありますが、多くの場合、使用を続けるうちに、1週間程度で症状が消えるようです。
また、とくに飲み薬として使う場合、体毛が増えるという副作用が見られます。
ミノキシジルによる治療の実際
とくに頭頂部に発毛効果が
ミノキシジルを使用すると、髪の毛が太くなり、長く伸びてくるのに加えて、休止期の毛根が成長期に移行して、新しい毛が生えてくることもあります。
一般的には、どちらかといえば頭頂部の薄毛に効果的であるとされていますが、数年というレベルの長期間にわたって使用を継続すると、前頭部にも発毛効果が見られるケースがあります。
使用終了後にどうするかも考えて
ただし、この薬による治療でむずかしいところの一つは、「発毛・育毛剤」の宿命ともいえますが、使用をやめると再び薄毛や脱毛を起こしてしまう人が少なくない点です。
薄毛、脱毛は、さまざまな原因、理由、きっかけで起こります。
男性型脱毛症、フケやアプラが多いなど頭皮の状態、睡眠、食事、喫煙、ストレスなどが原因となります。
薄毛、脱毛になる人は、体質、健康状態、生活状況など、薄毛、脱毛が起こりやすい「何か」をもっていることが多いのです。
頭皮の状況としていえば、血流が悪化し、皮脂腺がやや大きくなっている。
また、頭皮の皮下で白血球やリンパ球の増加が見られるという報告もあります。
いずれにせよ、ミノキシジルによる治療をやめる場合には、やめた後どうするか。
髪の毛の健康のために、何をしていくのか。
何ができるのか。
その点をよく患者さんと医師が相談しておく必要があります。
体毛の増加がどれくらい気になるか
ミノキシジルは現在、男性にも女性にも使える薬です。
実際にこの薬を使って発毛促進の治療を進めるときには、女性の患者さんに対してはとくに、副作用として体毛の増加があることについて説明します。
しかし、体の部位にもよりますが、体毛の成長期はせいぜい半年くらいで、手足の毛でも、まゆ毛でも、いつまでもどこまでも伸びるということはまずありませんので、実際にはさほど問題になるほどのことではありません。
とくに男性であれば、ほとんどは服で隠れてしまうでしょう。
女性にこの薬を使用するときには、これから夏に向かう季節であったり、肌の露出が比較的多い傾向の人の場合、体毛の増加の可能性をきちんと説明して、「どうしましょうか」と相談します。
本人が、服装でなんとかカバーしましょうということもありますし、もうしばらく待って、秋から冬にかけての時期に、この薬での治療に取り組んでみたいという人もいます。
睡眠、食事、喫煙、ストレス
十分で良質な睡眠をとる工夫を
仕事、プライベートを含めて、生活状況と髪の毛の状態は、さまざまにかかわりあっています。
ここでは、睡眠、食事、喫煙、ストレスなどとの関連について、それぞれ簡単に指摘しておきます。
睡眠と脱毛に関するくわしい医学的データはありません。
しかし、毎日の睡眠時間が5時間を割り込んでくると、脱毛など髪の毛に対する悪影響が目立ってくるようです。
片寄った食事や栄養不良の状態を長く続けたり、追度のダイエットなども、髪の毛の太さ、成長のスピード、色などに変化を及ぼします。
また、食事内容よりも、不規則な食事時間が問題と思われることもあります。
喫煙は、末梢の神経を収縮させ、毛根の周囲の血流を悪くするおそれがあります。
また、DNAを傷つける可能性も指摘されています。
髪の毛の悩みをもつ人はとくに、できるだけ禁煙をしてほしいと考えます。
すぐにはどうしてもやめられなくても、1日5本程度にまで減らしていただきたいです。
実際の患者さんでも、禁煙が発毛にプラスに働いたと思われるケースがあります。
過度のストレスは、脱毛につながることがあります。
精神的なストレス、不規則な生活などからくる身体的なストレスにより、自律神経のバランスがくずれて血管が収縮し、血行や栄養の供給が悪くなり、頭皮の状態の悪化や脱毛を引き起こすのではないかと考えられています。
睡眠が短ければ、せめてしっかり食事を
仕事が非常に忙しいなどの理由から、睡眠時間がどんどん減り、朝はギリギリまで寝床にいて朝食も取らずに出かけ、昼も麺類などですませたり食べなかったり、夜は帰りがけにコンビニ弁当を買ってすませる、というように、睡眠、食事、生活サイクルを、まとめてガタガタッと悪くしている人が少なくありません。
たとえばコンピュータ業界のシステムエンジニアの人たちなどが挙げられます。
何日も徹夜作業を続けたり、顧客企業に単身で長期間派遣されていたり、毎日その企業の通常業務外の深夜にシステム点検にあたっていたりといったように、生活リズムが全般的に大きくくずれたような状況のなかで、頭髪の健康状態を悪くしてしまっているのです。
たとえば、睡眠時間がどうしても短くなりがちだったら、せめて食事だけは、できるだけきちんと取るようにしましょう。
毎日の食事では、あまり細かいことにとらわれすぎずに、大事なことをきちんと確かめておきましょう。
まず、同じような食事内容を何回も繰り返さずに、なるべくたくさんの種類の食品を食べることです。
肉類だけでなく、魚介、豆類、卵などをなるべく取り入れ、野菜、果物、海藻類をよく食べるようにしていけば、食事のバランスが自然にある程度整ってきます。
サプリメントによる栄養補給
サプリメントによるビタミン、ミネラル補給
睡眠、食事など生活状況の改善は、すぐにはうまく進まないことも少なくありません。
実際の治療のなかでは、まずサプリメントの使用によって各種のビタミンやミネラルを補給し、患者さんの体調を整えていくことも、頭皮を改善し、髪の毛の材料を十分に供給するための実際的で有効なアプローチといえます。
成分としては、以下のようなものを重視しています。
ビタミン類では、ビタミンB群(B1、B2、B6、B12)、ビタミンC、ビタミンE、ビオチン(ビタミンH)、葉酸、など。
ミネラルでは、亜鉛、鉄、銅、マグネシウムなど。
とくに亜鉛成分が大事であると感じています。
このほか、炎症を抑えて頭皮の状況を改善する目的の抗炎症剤、胃腸の荒れを防ぐための胃腸薬なども使用することがあります。
実際の治療のなかでは、サプリメントによる各種ビタミン、ミネラルの摂取を10ヵ月以上続けた患者さんでは、頭皮の状況が改善し、治療を終了した後も順調に経過するケースが、比較的多く見られます。
疾患や薬剤による薄毛、抜け毛
薄毛、脱毛の背景に、何らかの病気が潜んでいることもあります。
女性によく見られるものですが、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、甲状腺機能低下症などの甲状腺疾患や、鉄欠乏性貧血などが挙げられます。
また、何らかの疾患の治療薬など薬剤の影響により脱毛が進むこともあります。
抗ガン剤による脱毛が、その代表的なケースです。
C型肝炎の中心的な治療法であるインターフェロン療法によっても、副作用として脱毛が起きることがあります。
疾患から起きている薄毛も、薬剤の影響による脱毛も、その原因である疾患が治癒したり、薬剤の使用を中止したりすれば、しばらく後に、薄毛や脱毛もしだいに改善するのがふつうです。
植毛、カツラ、増毛
自毛植毛
薄毛、脱毛に対する対処として、植毛、カツラ、増毛という方法もあります。
植毛では、人工毛の植毛もありますが、自身の後頭部の毛髪を移植する「自毛植毛」が、より安全な方法とされています。
近年では、生え際の自然さを重視して、単一毛の植毛が一般的になってきています。
「単一植毛法」というのは、後頭部の皮膚を毛根ごと採取して、切り取った組織を1~3本の毛根株ごとに細かく株分けし、頭頂部、前頭部などの毛の薄くなっている部分に、ちょうど「田植え」をするときのように、ひと株ごとに移植します。
後頭部の毛根が用いられるのは、後頭部の毛根には、5α-リダクターゼⅡ型が存在しないため、原因物質とされているジヒドロテストステロンが作られず、移植した後も男性型脱毛症が起きないからです。
2週間後には傷跡が目立たなくなり、5ヵ月を過ぎるとうぶ毛が生えそろう程度にまで回復します。
その後は毛がしだいに伸び、太くなって成長し、通常のヘアサイクルの繰り返しに入ります。
希望する部位の毛髪を確実に増やすことができる、毛の流れが自然であるというメリットもありますが、後頭部から採取できる髪の毛の本数には限りがあります。
1回の手術で髪の毛の密度を大きく取り戻すことは期待できず、数回の自毛植毛手術を繰り返すことにより、自然な仕上がりになります。
また、一度に広い範囲に植毛をすることもおすすめできません。
自毛植毛は、生え際など、比較的狭い範囲をリカバリーしようとするときに、適した方法といえます。
カツラ、増毛
カツラには、部分カツラ、総カツラがあり、抗菌、形状記憶、透湿性など、種々の工夫がされています。
費用はさまざまです。
風や速い動作などで外れることがあります。
入浴時には、着用したままはむずかしいようです。
地肌に直接貼りつけるカツラが話題になっています。
洗髪もスポーツも可能というメリットがありますが、基本的に貼る部分はうぶ毛まで剃らなくてはならないという弱点があります。
増毛は、薄くなった部位にまだ残っている髪の毛に、複数(通常は6本程度)の人工毛を結びつける技術です。
カツラのような不自然さはあまりありません。
元の毛が抜ければ増毛分もまとめてなくなりますので、増毛を繰り返さなければなりません。
結びつけた元の髪の毛が伸びることに対する、月1回程度のメンテナンスも必要です。
セカンドオピニオンのすすめ
医師との相性の見分け方
髪の毛の治療には、それなりの年月がかかります。
治療を開始してから発毛の効果が出始めるまで、順調に進んだとして、ふつう3~6ヵ月はかかります。
その後、1年から1年半程度で、どの程度の状態までもっていけるかが、多くの場合、一つの節目になってきます。
さらに2年、3年と治療を続ける人もいます。
それだけ長い期間のことですから、患者さんと医師との「相性」がいい、なんとなく波長が合うというのも、大事なボイントの一つです。
1回や2回の治療で、医師との相性などわからないと思う人もいるかもしれません。
ひとつの見方として、あなたがその医師の説明を聞いて、それなりにわかりやすい、素直な気持ちで聞くことができる、こちらからもわりと話しやすい、などと感じられるようであれば、とりあえずは、その医師はあなたにとって「いい医師」だと考えていいだろうと思います。
ただし、自分なりの考えで、医師との相性を判断するのは大切ですが、なんとなく迷ったり、踏ん切りがつかなかったりして、いくつもの医療機関を次々と受診するようなやり方は、おすすめできません。
「ドクターショッピング」などといいますが、ムダな費用が重なるばかりで、よりよい結果は望めません。
誰か別の医師に意見を聞いてみる
ある医療機関で聞いた治療に関する説明や今後の見通しなどについて、いちおう理解はできたけれど、本当に信頼していいのか、このままその医療機関で治療を受け続けてもいいのだろうかと、迷うこともあるだろうと思います。
そんなときには、もう一人、別の医師などの専門家に意見を聞くというのが、一つの有力な方法になります。
「セカンドオピニオン」という言葉は、そういったことを意味しています。
といっても、別にそれほどむずかしいことではありません。
あなたにとって、「信頼できて、話しやすいお医者さん」は誰かいないかと考えてみてください。
親戚、友達、友達の友達、など。
子供のころから受診しているかかりつけの医師でもいいでしょう。
その医師に、「○○という医療機関に行って髪の毛のことで受診したら、こんな治療をすると説明されたんだけど、どうなんだろうか?」と相談してみるのです。
その医師が何と言うか、もちろん聞いてみなければわかりませんが、少なくとも、一人で悩んだり迷ったりしているよりもずっと考え方が整理できて、これからの判断がしやすくなるだろうと思います。
そういった相談をする相手は、信頼できて話しやすい相手であれば、看護師など医師以外の医療職に就いている人でもいいかもしれません。
判断に迷ったときに、「もう一人の医師などの専門家」の意見を聞いてみると役に立つことが多いというのも、頭髪治療のような時間がかかる医療に取り組んでいくときには、覚えておいていいことの一つだろうと考えます。