髪の基礎知識

●髪の基礎知識
髪が薄くなってはじめて知る髪の大切さ。

当然あるべきものと疑わなかった髪が、徐々に痛み、抜けていく。

「もっと大切にするべきだったわ……」

そんな後悔とともに、いままでヘアスタイルや香りにあった興味は、髪を大切に守っていく努力へと移ってきていることでしょう。

そこで髪がどのように生え、どんな性質をもっているかを、確認してみたいと思います。

髪の生え代わりのメカニズム

洗髪のとき、ブラッシングのとき、頭皮から離れて抜け落ちる髪は、髪を気にしはじめた人にはその量が心配になります。

女性の場合、男性より髪が長いことが多いので、同じ量の抜け毛でも長いほうが量的には多いように感じられることがあります。

特に風邪などで幾日も洗髪をしないときのように、手入れの不完全さから一時的に抜け毛が多くなることはあります。

でも、人間には誰でも1日に何本かの抜け毛はあるものです。

その量はだいたい50~60本。

これは言ってみれば、髪が生えてから一定の寿命を全うして抜け落ちる健康的な抜け毛です。

健康的な抜け毛のことを通常、ヘアサイクル、毛周期と呼んでいます。

そのメカニズムをご説明しましょう。

赤ちゃんは産まれたときから髪が生えていますが、これはおかあさんの胎内に宿って3ヵ月くらいからその芽が育っているからです。

その芽は成長にしたがって発育し、完成された毛包になります。

毛包は言ってみれば、毛を生やす土台のようなもの。

おなかのなかでそうした過程が完成されて、オギャーと生まれたときには数センチに成長したうぶ毛となっているのです。

このうぶ毛は、2歳ころにはすべて抜け落ちてしまいます。

そしてその毛に代わってもう 少ししっかりとした新しい毛が生えてきます。

新しく生えてきた毛は今度は、3年くらいで次の新しい髪にとって代わります。

2回目に生え代わった髪の毛は、さらに4 年から6年くらいの寿命で次の毛にとって代わります。

この過程をくり返しながら、髪の毛は徐々に太くなり、子どもの毛から大人の毛へと変わっていきます。

つまり、1本1本の髪の毛は、生まれたときの髪がそのまま伸び続けているわけではなく、一定の期間が過ぎると自然に脱毛し、同じ場所から改めて新しい髪が生えてくるという過程をくり返しているのです。

この過程は成長期→退化期。休止期が順番に訪れるようになっていて、成長期には髪が伸び、休止期入ると、次の髪の毛にとって代わるために古い髪は抜けていきます。

この生え代わりのくり返しが、ヘアサイクル、毛周期と呼ばれているものです。

毛周期は大人になると一定の期間を持つようになります。

その目安はだいたい5~6年。

成長期、退化期、休止期を経て自然に抜け落ちる髪は、言わば天寿を全うした健康的な抜け毛なのです。

赤ちゃんのころからくり返された毛周期のピークは、男性は20歳、女性では25~30歳くらいまで。

そのあとは髪が抜け代わるたびに太くなることはありませんが、健康的な髪なら、5~6年の周期を経て抜けていくのは当然の自然現像なのです。

最近抜け毛が多くなったと感じていらっしゃる方には、一度抜けた髪の毛の長さを見ていただきたいと思います。

抜けた髪が長く、1日50〜60本の抜け毛なら、決して、驚くことはありません。

ただし、どちらの条件も満たしていない場合、つまり、短い髪が抜け出したり、抜け落ちる量が著しいときには、正常とは言えなくなります。

季節的にはどうでしょうか。

「まさか、犬や猫じゃあるまし……」

というのは間違い。

人間もまた季節の移り変わりに影響を受けながら自然の変化にあわせて生きている動物です。

秋には抜け毛が多くなります。

これは夏の紫外線によるダメージもありますが、次に訪れる冬の準備のために細胞が入れ替わるため。

また春には、夏の暑さに強い細胞の活動が活発化して、冬の間に働いた細胞が休止するために抜け毛が多くなります。

こうした条件を除いて1日50~60本の抜け毛なら、まったく心配はいりません。

 

髪が伸びるメカニズム

専門的には髪の発生密度と言いますが、平均的な人間の髪の毛は、多い人で15万本、少ない人で6万本あると言われています。

一見多そうに見える人でも束ねてみると、てても小さくまとまってしまう髪、1本の三編みにするととてもボリュームのある髪など、髪の量はとても個性的です。

この髪の多い少ないを決める発生密度は、胎児のとにすでに決定されていると言われています。

頭の大きさにもよりますが、大まかな計算式では10万5000本くらいが一般的な髪の本数です。

密度は年を経るにしたがて減ることはありますが、増えることはありません。

では、その髪はどのように生え、育っているのでしょうか。

メカニズムを解明してみましょう。

髪の発育は皮膚の新陳代謝と密接な関係をもっています。

皮膚は、たえず新陳代謝をくり返しています。

皮膚の構造は表面から角質層、それを含む表皮、真皮から成り立っています。

細胞は下のほうから順次上のほうへと移動して、最終的に角質細胞を形作っていきます。

これが垢となって、いずれは剥がれ落ちる運命をたどります。

髪が生えてくる毛孔、つまり毛穴と一般的に言われている穴は、発生学的にいえば、皮膚の一部である真皮が陥没してできたものです。

毛孔の低部には、真皮の下の方から玉葱の根のように丸い突起が出ています。

この部分は毛乳頭と呼ばれ、それを取り囲むように毛母細胞群が密生しています。

言ってみれば、この部分はちょうど表皮の基底細胞のような働きをしています。

この細胞群が毛乳頭から栄養を受け取り、子細胞を次々と作り出し、上へ上へと伸びているのです。

これが髪の発生です。

つまり、髪の毛は、皮膚が新陳代謝をくり返すと同じ発育過程をたどっていくというわけです。

毛乳頭から栄養を受け取って伸びはじめた髪は、健康な人で1ヵ月におよそ1センチほど伸びていきます。

では、このスピードで髪を伸ばし続けたら、いったいどのくらいの長さになるでしょうか。

単純に計算すると、1 センチですから、毛周期が終わるまでの5年間伸ばし続けると60センチという計算が成り立ちます。

「それはおかしいんじゃないかしら? だって腰の下まで長く伸ばしている人を見かけることがあるけれど、長さでいえばどう見ても1メートルくらいはあるし……」

当然の疑問です。

5、6年周期で生え変わる髪が、そんなに長くなるはずは、確かにありませんね。

ただ、髪の生え変わりに大切な頭皮の状態が抜群によくて、細くなった毛や切れ毛、枝毛を丹念に処理してやるなど、髪の1本1本を大切に育てていけば延命につながる可能性はあります。

髪の毛の断面が整えば、ケラチン(髪の毛を構成している成分)の流出も防ぐことができますから、弾力も失われずに長い髪を維持することができるのです。

髪の毛の構造と成分

1本の太さが0・何ミリという髪の毛。

繊維にも見える細い髪の毛ですが、顕微鏡で観察してみると、実に複雑な3つの層から構成されていることがわかります。

外側の層が毛表皮、真ん中の層が毛皮質、中心層が毛髄質。

先ほどの、皮膚の構造(角質層、表皮、真皮)とまったく同じ三層の細胞で構成されています。

外側の毛表皮は、細胞同士が魚のウロコのように重なりあっています。

キューティクル、と呼ばれるものがそれです。

キューティクルの働きを一言でいえばガードマンということができます。

つまり、毛表皮の下の組織である毛皮質、毛髄質が損失を受けないように守っているからです。

髪の毛はいたるところで危険にさらされています。

パーマ液に含まれているチオグリコール酸アンモニウム液、シャンプーに含まれている石油から合成された界面活性剤、アルコール系のヘアスプレー、ヘアカラー、カラーリンス……、キューティクルは細胞をウロコ状に重なり合わせることによって、これら髪にとって異質な化学薬品が内部に浸透するのを防いでいるのです。

また、吸房や夏の太陽のもとで、髪の水分が必要以上に蒸発しないようにする働きももっています。

キューティクルが損傷すると、髪の毛につやがなくなり、枝毛や切れ毛の原因になります。

髪がパサついたり、ベタッとした感じがあったり、ブラシの通りが悪いときなどは、キューティクルが痛んでいる証拠。

一番はじめに痛むのがキューティクルですから、これらの症状が見られたら、早めの手当てが必要です。

真ん中の層は毛皮質。

この細胞層はケラチンタンパクと呼ばれるたんぱく質や脂質で構成されています。

髪の毛を燃やしたときに出るあの匂いは、このたんぱく質に含まれている硫黄が燃える匂いです。

ケラチンタンパクは、私たちの筋肉や内臓を維持する、生命の源と言われるたんぱく質のなかでも、もっとも硬く、丈夫なたんぱく質です。

髪の毛のほか爪、皮膚もこのケラチンタンパクでできていますが、厳密にいえば、皮膚を基盤にして変化・発生したものが髪の毛や爪なのです。

髪の毛にあるケラチンタンパクがもっとも損傷を受けやすいのパーマ液やヘアカラー、ヘアスプレーなどの毛髪製品です。

ガードマンのキューティクルを傷め、さらに浸透してケラチンタンパクを分解してしまうのです。
また、髪の毛にはメラニン色素も含まれています。

私たち日本人の髪が黒いのはこの色素がブロンドや栗毛色の髪が多い外人に比べて豊富だからです。
メラニン色素によって光の反射率が低くなり、黒く見えるのです。

反対に、ブロンドの髪にはメラニン色素が少なく、毛皮質の中に気泡が含まれているため、光が反射して輝いてみえるというわけです。

毛髄質は中央が空になった円形の細胞です。

この毛髄質は、体毛など髪の毛以外の毛には存在していません。

残念ながら、どうしてそのような構造の差があるのか、また、毛髄質がどんな働きをしているのかは、いまだ解明されてません。

個人差の大きい「髪の質」

体格や性格、顔の一つ一つが人間それぞれで違うように、髪の毛の質は千差万別です。

まずその太さ細さです。

通常、私たち日本人の髪の太さは0.05~0.15ミリと言われていますが、いかにも細くて柔らかい感じのする、いわゆるネコ毛と呼ばれる髪の毛の太さはだいたい0.06ミリ程度の太さです。

反対に、重い感じがする髪になるとだいたい0.1ミリ以上はあります。

0・何ミリの単位ですから、見ためにはそれほどの差はないように見えますが、手にとって見ると、その差は明らかです。

私たちの髪は、生まれたときからそれ以降、毛周期をくり返して子どもの髪から太い大人の髪へと生え変わっていきます。

そのピークが男性では20歳、女性では25~30歳にビークを迎えるます。

では、ピーク後はどうでしょう。

変化は非常に個人差のあるものですが、だいたい10歳年齢を重ねるごとに0.03ミリずつ細くなっていくと言われています。

人間の体にもどんなに抵抗しようと老化が訪れるように、髪の毛も例外ではありません。

言ってみれば、髪の老化現象です。

「最近なんだか薄くなってきたみたいで……」

実際、髪の毛が薄くなってきたと感じていらっしゃる方も多いことでしょう。

束ねてみると少なくなってきたようだし、何となく地肌がすけてみえるような.…

しかし、1本1本の髪が細くなっているのですから、それも当然です。

髪の総量としては変わっていなくても、全体として少なくなった感じがするだけのことなのです。

年を重ねると、人によっても違いますが、薄毛はある程度さけられないことです。

でも、1日に50~60本の正常な抜け毛で、健康的な生活を送っているのであれば、大丈夫です。

その髪の細さ太さ、言い換えれば、髪の硬さ柔らかさを決めているのは、髪の3層構造のうちの一番外側にある毛表皮です。

キューティクルが他の2層を厚く覆っている髪は硬く、これが薄い場合は柔らかい髪になります。

女性は一般的にこの毛表皮が厚い傾向にあり、男性は女性よりは薄いようです。

これは毛周期のピークが女性より男性のほうが短いということと少なからず関係があるのかもしれません。

また、女性のほうが若い頃から髮の手入れに熱心ですから、そんなことも影響しているのかもしれません。

最近では、男性の髪に対する関心は高まってきていますから、昔ほど女性と男性の差はなくなってきているようです。

では髪の毛の質はどうでしょうか。

日本人には 生まれながらにまっすぐな毛とちぢれた毛の2種類がありますが、民族的に見ると、だいたい3種類に分類できるようです。

黒人…………巻状毛
白人…………浅広波状毛
アジア人……直状毛

どうして人種によってこのような差があるのかは、まだはっきりとはわかっていせん。

ある説によれば、太陽光線に含まれている紫外線の量によるとも言われています。

しかし、同じ人種でも直毛、巻毛などの差があるわけですから、この説ではできない部分が多いようです。

いずれにしても、親から子への遺伝が連綿と続くように、何千年もの歳月をかけてつちかわれた民族的な遺伝が関与していると思われます。

遺伝と断言していいかどうかは今後研究に待たなければなりませんが、なぜ直毛とちぢれた毛が発生するのかは、その毛根部に歴然とした違いのあることがわかります。

直毛の毛根部は、たとえれば野菜のエシャレットのような形をしていますが、ちぢれた毛のそれはもっと太く、ちょうどゼンマイのようにまるまった形をしています。

また、毛幹部にもその違いは見られます。

直毛の毛幹部がほぼ円形に近いのに対して、ちぢれた毛の断面を見ると、その形はだ円状に平たくなっているのがわかります。

この形状は一生変わることはありません。

よく子どもの頃はまっすぐな髪だったのに、大人になってからちぢれ毛になったという方がいらっしゃいますが、これは潜在的な髪質が大人になって表面化してきたということ。

つまり、小さい頃の細く柔らかい毛が、毛周期をくり返しながら大人の毛へと変化していき、本来その人が持っていた髪質が現れてきたということなのです。

この記事を書いた人
佐々木遥

毛髪診断士、管理栄養士、フードコーディネーター
1984年生まれ。さいたま市出身。2児の母。
大妻女子大学管理栄養士専攻コースを卒業後、管理栄養士資格を取得。
健康食といわれる和食の利点を活かしつつ毛髪効果のある「和料理」を提唱する。趣味はマンガ(ワンピース)。

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