活性酸素と過酸化脂質を作り出す体とは
活性酸素というのは、私たちが酸素を吸って生きている限り、その副産物として体内で作り出されるもの。
簡単に言えばそういうことになります。
活性酸素は、一面では体内に侵入してきた病原体を撃退する役目を担っていますが、その役割の大半は酵素毒と呼ばれて、生体内では悪役を演じている物質です。
普通の酸素とは違い非常に不安定な構造をもっているため、他の物質にくっついて安定を図ろうとします。
それがよい方向に安定すれば問題はないのですが、その反応は、人体に害を及ぼす、危険でやっかいな作用をもっているのです。
活性酸素には、体のなかで他の物質と、くっつこうとする反応が起こると、たんぱく質や核酸、脂質などが変質して、人間の体を作りあげている細胞の老化や変性を早める作用があります。
さらに、動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸という酸とくっつくと、過酸化脂質と呼ばれる有害な毒物を作り出してしまいます。
これを酸化と言いますが、この物資は細胞膜を一瞬にして破壊してしまうほど、強い毒性をもっています。
もしこの物質によって血管が傷つけられたらどうなるでしょう。
血管壁がはがれ落ちて血液中を流れ、血管を詰まらせることになってしまいます。
また、傷ついた血管から中性脂肪やコレステロールが血管壁に染みこんでいき、動脈の弾力が失われてしまいます。
そして病気はさまざまな形で現れはじめます。
過酸化脂質が動脈の内側に沈着すると、血管は細くなり動脈硬化を招いて血流を悪くします。
こうした血管の異変が心臓で起こると狭心症や心筋梗塞の引き金になり、脳の血管が異変すると脳卒中や脳梗塞などが発症する原因になります。
また、過酸化脂質がもたらした生体の組織障害は、関節リュウマチ、ベーチェット病、川崎病などの炎症疾患を作り出し、あるいは増悪させることにもなります。
もちろん、血液の流れを体の中心で妨害するような事態が起これば、抹消血管への血流は不十分になります。
頭皮が髪の毛を生やす力を減少させていくのは明らかです。
これらの病気は、組織障害や、赤血球の破壊、過酸化の昂進、血小板凝固促進、リンバ障害などの原因によって起こりますが、こういった障害を総称して自己過酸化損傷といいます。
傾向としては、体が弱く、不安や悩み、ストレスの多い人が活性酸素を作りやすいといわれています。
また、たばこやアルコール、カビ、排気ガスなどが活発に反応を起こす元にもなるといいますが、もっとも直接的に影響を及ぼしているのはやはり、普段からの食生活です。
弱アルカリ体質を維持する食事が大切
健康の基本はバランスのとれた食事です。
現代では、バランスのとれた食生活を実行することはおろか、健康を害す食品をとり続ける傾向はどんどん増すばかりです。
人間の体は常に、弱アルカリ性の状態を維持するように働いています。
しかし酸性食品を多く摂りすぎていると、弱アルカリ体質に保とうとするバランスはたちまち崩れてしまいます。
その歪みはさまざまな弊害を私たちの体にもたらします。
その酸性食品の筆頭にあげられるのが、動物性脂肪(飽和脂肪酸)です。
動物性脂肪に含まれる飽和脂肪酸は、活性酸素の第一の好物です。
過剰に反応し続けていくと、体はやがて酸性体質に傾いていきます。
動物性脂肪の過剰摂取はまた、血液中のコレステロールを増やし、中性脂肪を作り出すという、体にとってはありがたくない作用を引き起こします。
コレステロールには善玉と悪玉のタイプがあり、これらを合わせて総コレステロールと呼んでいますが、その正常値は通常血液1dl中130~250㎎。
この値より多い数値が現れると、高コレステロール血症と言い、動脈硬化を誘発する大きな原因となります。
もちろん身体にとって悪影響を及ぼすのは悪玉コレステロール。
たとえ総コレステロールの値が正常値でも、悪玉の値が血液1dl中80~12㎎を越えてしまうと、やはり動脈硬化は進行し、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患を起こす可能性が出てきます。
一方、血液中の中性脂肪は、食後その値を一時的に上昇させますが、エネルギー源として消費されたり、皮下脂肪として蓄えられたりして、2時間くらいすると正常値に戻るのが普通です。
なかなか正常値に戻らない状態を高脂血症といい、この場合もまた、動脈硬化を発生・進行させる大きな誘因となってしまいます。
高脂血症は動物性脂肪の過剰摂取のほか、アルコールの常飲や糖分の摂りすぎなどによっても起こります。
アルコールでは特に、日本酒が中性脂肪を増加させます。
日本酒は強酸性の性質をもっているため、弱アルカリを維持しようとする体は、それを中性脂肪として生み出してしまうからです。
いったんできてしまった悪性(中性)脂肪を取り除くことは容易なことではありません。
そればかりか、糖分の摂りすぎがその弊害にさらに拍車をかけてしまいます。
肝臓には有毒な物質を無害に分解しようとする働きがありますが、動物性脂肪、アルコール、さらに糖分の摂りすぎが加われば、肝臓は過剰な労働を強いられ、悲鳴をあげてしまいます。
肝臓の機能低下は、すなわち成人病への第一歩でもあるのです。
こうした食生活の過ちから起こる脱毛の多くは、脂漏性脱毛となって現れます。
抜け落ちた髪の毛根部を見ると、ベタッとした感じで、全体が白い皮脂で覆われているのが特徴。
皮脂の分泌が過剰であることに原因があります。
この場合、頭皮から出るフケも同じようにベタッとしたものですから、それが毛孔をふさぎ、毛孔から出されるはずの皮脂が、毛根を包む毛包の中に溜まってしまうという悪循環を引き起こします。
結果は毛の固着力が弱まったり、毛乳頭の細胞分裂が阻害され、抜け毛となってしまうというわけです。
発毛体質を作る食生活を心がける
人間が健康でいられるためには、体質を弱アルカリ体質に維持することがもっとも肝心です。
肉類が好きで、アルコールもよく飲み、たばこも吸う。
おまけに甘いものには目がないとくれば、体が酸性体質に傾いていることは間違いありません。
いまは症状が現れていなくても、いずれは確実に、動脈硬化や狭心症をはじめとした成人病に見舞われてしまいます。
それはつまり、薄毛、脱毛へのレールを敷かれたことと同じなのです。
即刻、体質改善が必要です。
体質改善項目を列挙しましょう。
①植物性脂肪(不飽和脂肪酸)を多く摂る
脂肪は人間の生体を維持していくためにはなくてはならない栄養素の一つです。
それは動物性のものと植物性のものの2種類に分けられますが、先ほどから槍玉に上がっている動物性脂肪と、積極的に摂りたい植物性の脂肪とはどんな違いがあるのか。
ご説明しましょう。
動物性の脂肪は飽和脂肪酸が多くを占め、植物性の脂肪は不飽和脂肪酸が多くを占めています。
この両者の違いを簡単に言えば、前者はラードのもの、後者は液状ということができます。
形状的に考えれば、不飽和脂肪酸は飽和脂肪酸に比べて融点(油が溶けはじめる温度)が低く、固まらずに体内を流れていくと言えますが、実際の効果は、不飽和脂肪酸の一つαーリノレン酸が、血管内のコレステロールと結びついて、胆汁となって排泄されていくことにあります。
つまり、コレステロールを除去し、血液の凝固を防ぎ、血液中の中性脂肪を減らし、血液と血管内をきれいにする働きがあるのです。
また、植物性のリノール酸には動脈硬化を防ぐ効果が認められています。
不飽和脂肪酸を多く含む食品は魚介類、海藻など。
量は少ないですが野菜にも含まれています。
植物油のなかでは菜種油、大豆油が豊富に含まれているものです。
たんぱく質ももちろん、軍配は植物性の食品に上がります。
肉類のたんぱ く質はカロリーも高く、肥満の原因にもなります。
大豆製品、魚、海藻などを積極的に摂りましょう。
どうしても肉類で摂りたいなら、とり肉の、脂肪のないささみの部分を食べるようにしたいものです。
②野菜類を多く摂る
野来はすぐれた健康食品です。
他の食品をどれだけたくさん摂っても、野菜を食べないと、せっかく摂った栄養素はその力を発揮できません。
たんぱく質も脂肪も糖質も、人間に必須の栄養素は、野菜に含まれるビタミン、ミネラルが潤滑油となってはじめて働き出すからです。
野菜には緑黄色野菜と淡色野菜の2種類がありますが、他のすべての栄養素をバランスよく摂るためには、緑黄色野菜100gと淡色野菜200gを合わせて、1日300gの野来が必要だと言われています。
野菜に共通した特徴は食物繊維の多いこと。
食物概雑は腸のぜん動運動を促して便秘解消の効果があるほか、悪玉コレステロールや有害物質を吸着して体外に排出する働きがあります。
動脈硬化をはじめとしたさまざまな成人病の予防に有効です。
緑黄色野菜に豊富に含まれているのは、カロチンです。
体内に入ってビタミンA効果のある物質で、皮膚や粘膜を丈夫にする働きのほか、最近では、脂質の酸化を防ぎ、活性酸素を無害化する働きのあることがわかってきました。
活性酸素は万病の元ともいえる物質。
野菜はここでも有効に働きます。
そのほか、ビタミンC、ビタミンB群、カリウム、カルシウム、 鉄分など、私たちの体を活性化させ、毒素を取り除く作用は数え上げたら、きりがありません。
その基本的な効果は主に循環器系の機能低下を防いだり、成人病といわれる病気のほとんどに効果化的に働きます。
なかには精神の沈静作用があるといわれる野菜もあり、現代のようにストレスの多い時代では、欠かせない食品と言えるでしょう。
ニンジン、シソ、パセリ、カボチャ、ブロッコリー、ニラ、ナス、コマツナなど、野菜を積極的に摂る努力は不可欠です。
③タウリンを多く摂る。
タウリンは遊離アミノ酸の一種で、構成成分にイオウを含み、人間の体の中の心筋、、筋肉、肺、胸、骨髄などに多量に含まれている物質です。
そのタウリンには、非常に多くの生理的効果のあることが、明らかにされてきました。
その効果の一つに血液中のコレステロールを減少させることがあります。
また、肝臓の解毒機能を強化する、血圧を正常にする効果もあります。
さらに、コレステロールを胆汁として体外に排出する作用があり、心筋梗塞などを防ぐと言われています。
不飽和脂肪酸の効果に共通しますが、タウリンが多く含まれているのは、特に魚介類。
なかでも貝類やイカ、タコなどの軟体動物系、魚ではイワシ、マグロなど、青みの魚に多く含まれています。
④糖分は極力摂らない
糖分は、酸性体質を助長するものだからです。
私たちの食生活に欠けているのは、海で取れるものを食べ、畑の恵みをいかした食生活です。
しかし、こうした食生活をすることは、忙しく動く社会環境のなかでは、そう簡単ではありません。
正しい生活習慣を保ち、正しい食生活をし、体が正しく機能してはじめて、髪の毛は健康でいられるのです。
薄毛、脱毛に悩み始める前の予防としても、毎日の食生活の大切さを、もう一度考えていただきたいと思います。
水・化学物質などの環境と髪との関係
原因のはっきりしない症状に見舞われたという訴えは増えはじめています。
アレルギーという言葉でくくられる症状も、昔にはなかった病気です。
ただし、昔からアレルギーはあったと思われます。
いまほど蔓延し、完治しない病気としてはとらえられていなかった、といったほうが正しいでしょう。
鼻炎や、幼児の間にも深刻な喘息、アトピーなどがその代表です。
こうした病気の増加は、いったい何を意味しているのでしょうか。
自然にあるものを自然のまま受け入れるだけの抵抗力が、人間の体から徐々に失われつつあるのではないかということです。
そして、人工的に作られたものに囲まれながら、私たちの体は次第に蝕まれているのです。
人工的に作られたもので、私たちの生活に密着した食品の一つに塩があります。
現在市販されている塩は、そのほとんどが精製されたもの。
海から取った、ミネラルたっぷりの自然塩から、マグネシウムを取り除いたものです。
自然塩はにがりが強く、固まりやすいために一般受けしないというのが、マグネシウム抜きの塩を作った理由とも言われています。
サラサラしていますから、食卓で使うには消費者にとっても便利だったのでしょう。
しかし、便利さを追求するあまり、塩本来の姿が見えなくなってしまったのです。
ミネラルには、互いに協力し合って体に取りこみやすい形を作るものがあります。
自然塩に含まれるカルシウムは、マグネシウムと一緒に取りこまれる形を作っています。
カリウムもそうです。
マグネシウムを取り除いてしまったら、カルシウムもカリウムも体には入ってきません。
となれば、塩の役割はほとんど原形を成していないことになります。
塩分を摂りすぎると高血圧になると言われています。
しかしそれは、精製された塩を多量に使うからです。
自然塩なら、しっかりと塩の味もしますし、使う量も少なくてすむはずなのです。
便利さと引き換えにしたものは、他にもたくさんあります。
食品添加物もそうでしょう。
防腐剤、保存料、合成着色料……
いかにもそれらの塊といったスナック菓子は、安価なお菓子として売られています。
また、環境汚染問題で真っ先に取り上げられる水もそうです。
便利なものを作るために有害な化学物質を排泄する。
汚染はどんどん進行してしまいます。
有機化合物は、言い換えれば人工的に作られた毒と言えます。
もともとは工業用に作られたこの毒は、環境の中にほうり出されて、土壌や大気、水を汚染します。
そしてそれは私たちの体内にも取りこまれ、著積されていくのです。
親油性の強い毒は体の中の脂の多いところに集まります。
脳を傷つけ、細胞膜を冒し、侵入していきます。
遺伝子に異変が起こると、さまざまな病気となってその毒は、さらに私たちの体を蝕んでいくのです。
その過程には、市販のシャンプー・リンス、パーマ液も無縁ではありません。
石油合成の界面活性剤、パーマ液に含まれるアンモニア……。
一人一人が使う分は少量だとしても、極端に言えば、毎日、人口の分だけ、生活排水の中に流れていくのです。
私たちの髪を痛めた物質が、生活排水として流れていき、有機化合物となって水道水に帰ってくる。
それが今度は、私たちの体を蝕み、頭皮から髪の毛を痛めはじめるという悪循環をくり返すのです。
人間は自然界の一部です。
汚染をくり返すことは、すなわち人間そのものも破壊へと導くことになりかねません。
私たちは便利さと引き換えにいろいろなものを失ってしまいましたが、それを取り返すための努力が、これからは急務と言えます。